現代の産業オートメーションを成功に導く秘訣の一つに、3Dビジョンの力が挙げられます。従来の2Dセンサーは平面的な画像しか提供できず、デバイス検査などのアプリケーションでの有効性には限界がありました。物体の寸法が含まれるバーコードの読み取りは可能ですが、真の形状やサイズ、あるいは潜在的なへこみ、欠陥、不規則性などを独自に測定することはできません。さらに、2Dの読み取りは照明条件の影響を受けやすく、重要な関心領域が不明瞭になったり、歪んだりする可能性があります。
これらの制約を打破するには、人間の視覚のように3DでZ軸を処理する深度センシングが有効です。今日では、深度カメラは物体の立体的な形状を認識し、デバイスの精密な検査を実行し、さらにはアクセス制御などのアプリケーションで微妙な顔の特徴を検出することも可能です。これらの能力により、3Dビジョンは、防衛・航空宇宙から医療、自動車、家電に至るまで、幅広い分野においてゲームチェンジャーとなっています。障害物の検出、顔認識、自動運転、ロボットアシスタントなど、深度センシングは現代の産業オートメーションの重要な要素です。
深度センシングは、方法に関係なく、アクティブまたはパッシブな視覚照明に依存します。一般的に、パッシブな照明を利用した深度センシングでは、人間の目と非常によく似た、高精度に調整されたステレオセンサーと視差が必要です。アクティブセンシングでは、ターゲットに向けて光を照射し、反射されたエネルギーを使用して深度を測定します。これにはエネルギー放射体が必要ですが、雲や煙の透過、24時間365日の稼働、より確実な動作などの利点があります。
アクティブ照明技術には、直接Time-of-Flight(dToF)、間接Time-of-Flight(iToF)、ストラクチャードライト、アクティブステレオなど、いくつかの種類があります。間接Time-of-Flight(iToF)は、送信信号と受信信号間の位相シフトを利用して距離を計算します。非常に正確であり、照明ハードウェアは簡素です。
このブログでは、オンセミの最新の製品ファミリーであるHyperlux IDを紹介します。Hypelux IDによって、iToF技術は大きな進歩を遂げました。この進歩を活かして、現在の産業および商業アプリケーションでの深度センシングをどのように改善できるかを説明します。
既存のiToF技術の制約が広範な普及を阻む
iToFセンシングは、多くのアプリケーションの中核をなしています。その代表的なアプリケーションの一つが、さまざまなスマートフォンで見られる顔認識です。しかし、このアクセス制御機能は、近距離でしか機能しません。iToFを使用するその他のアプリケーションには、マシンビジョン(MV)、ロボティクス、拡張現実/仮想現実(AR/VR)、バイオメトリクス、および患者モニタリングなどがあります。現在、これらのアプリケーションは、高解像度を必要としない静止物体を対象とした近距離(5m以内)での屋内使用に限定されます。iToF技術の潜在的な可能性は、モーション(動き)、ハードウェアおよびデータ処理アーキテクチャーのオーバーヘッドと複雑さ、そして綿密なキャリブレーションの必要性など、いくつかの課題によって制限されています。
これらの大きな障壁のために、エンジニアは複雑で高価な3Dソリューションを導入して深度情報を取得するか、または深度情報の取得を断念するしかありません。オンセミは、目覚ましい技術革新によって、従来の制約を受けることなくiToFの利点を活用できるHyperlux IDファミリーを発表しました。Hyperlux IDのiToF実装によって、この重要な技術がより広く普及することが可能になります。
Hyperlux IDの進歩
オンセミのHyperlux IDセンサーファミリーは、当初はAF0130とAF0131の2つの1.2メガピクセル(MP)iToF製品で構成されています。このファミリーは、以下の4つの重要な分野において、高度なセンサー性能および開発を提供します。
1. 移動物体からの信頼性の高い深度情報の受信
2. 高精度で最適な分解能/深度距離の実現
3. コストおよびサイズの削減
4. キャリブレーション時間の短縮
前述の各分野と改善点について、さらに詳しく説明します。
モーションアーチファクトの低減
iToFセンサーをより広く普及させるには、移動物体で適切に機能し、動きの影響を受けずに正確な結果を生成できる必要があります。前述のように、iToFセンシングは、4つ以上の異なる位相を使用して深度を計算する光の反射に依存します。市販されている既存のほぼすべてのiToFセンシングソリューションは、これらの位相を同時に取得して処理することはできないため、移動物体で問題が生じます。独自の統合および読み出し構造を用いて設計されたHyperlux ID深度センサーは、オンチップストレージとリアルタイム処理が可能なグローバルシャッターを使用し、コンベヤーベルト動作、ロボットアーム、監視、衝突回避、ジェスチャー検出など、高速移動物体のキャプチャーアプリケーションを可能にします。
解像度向上 = 精度向上と深度拡大
現在市販されている大部分のiToFセンサーはVGA解像度しかなく、精度が低いためアプリケーションが制限されます。VGAが普及している理由の一つは、前述の複雑な位相キャプチャーとデータ集約的な処理によるものです。対照的に、Hyperlux IDセンサーは、高性能3.5μm裏面照射(BSI)ピクセルを使用した、1.2 MP解像度(1280x960)で設計されています。Hyperlux IDセンサーは、VGAと比較して解像度が向上した結果として、深度範囲の拡大というもう一つの重要な利点を提供します。さらに、近距離では高い精度が得られ、より広角なレンズを使用できます。
Hyperlux ID センサーは、高解像度により、量子効率の向上と深度ジッターの低減も実現しています。これらの機能強化によって、ジェスチャー認識、品質管理/検査、アクセス制御など、高解像度と拡大された深度が最も重要なiToFセンサーの新しいアプリケーションが実現します。
より長い測定範囲
Hyperlux ID深度センサーは、解像度向上に伴い、現在入手可能な他のiToFセンサーと比較して、はるかに広い範囲で深度を測定できます。現在のiToF製品の屋内測定範囲が10メートル未満であるのに対し、Hyperlux ID iToFセンサーファミリーは最大30メートルまで測定可能です。高性能グローバルシャッターピクセルを使用することで、センサーアレイ全体をアクティブ赤外線照明に密接に同調させることができ、それにより、一般的な室内照明や最も困難な太陽光など、他の赤外線源からのノイズを抑制します。
より容易なキャリブレーションと開発
iToFセンサーでの位相差を正確に記録して計算するには、精密なキャリブレーションが必要であり、これは非常に時間のかかるプロセスです。このプロセスを容易にするために、オンセミはHyperlux IDセンサーのキャリブレーションを簡素化し、セットアップ時間を短縮する独自の技術を開発しました。
開発を支援するために、オンセミはベースボード、センサーヘッドボード、レーザーボードを同梱した、使いやすい開発キットを用意しました。このキットは、0.5~30メートルの範囲で、屋内と屋外の両方で使用可能です。このキットを使用すると、画像から深度マップ、3D点群、位相出力、深度出力といったデータを生成できます。
最後に、スペクトラム拡散技術を使用することで、多くのiToF(およびその他の赤外線対応デバイス)センサーを、他のデバイスからの干渉を気にすることなく、同じシステム内で使用できます。
オンセミのiToFセンサーはより小型・低コストでより多くのことを実行
iToFセンサーは、正確な3D深度測定に優れており、産業および商業アプリケーションで確固たる地位を確立しています。オンセミのHyperlux ID深度センサーは、著しい性能の向上と設計の簡素化により、iToF深度センシングの新しいアプリケーションの世界を開きます。
現在市販されているiToFセンサーと比較して、Hyperlux ID深度センサーは、動きのある物体、屋外環境、より長い距離での測定において、より効果的に機能します。さらに、Hyperlux ID深度センサーは、斬新な設計により、コスト効率が高く、基板実装面積が小さく、扱いやすくなっています。
Hyperlux ID深度センサーファミリーは現在、AF0130とAF0131の2つの製品で構成されています。AF0130は深度処理機能を内蔵、AF0131には深度処理機能はなく、独自のアルゴリズムを使用するお客様向けの製品です。
Hyperlux ID iToF深度センサーの詳細は、こちらをご覧ください。
関連資料
ホワイトペーパー:Overcoming Challenges through Indirect Time-of-Flight Advancements
ビデオ: Advancements with Indirect Time-of-Flight Depth Sensing from Hyperlux ID
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著者紹介
スティーブン・ハリス(Steven Harris)、オンセミ、インダストリアルおよびコマーシャル・センシング・ディビジョン、マーケティング担当シニア・ディレクター
スティーブン・ハリスは、オンセミのインダストリアルおよびコマーシャル・センシング・ディビジョンのマーケティング担当シニア・ディレクターです。2012年6月にAptina社に入社し、セキュリティ・イメージセンサー・プロダクトラインのプロダクトライン・マネージャーを務めました。セキュリティ・プロダクトライン・マネージャーとして収益を3倍に成長させ、市場シェアで1位を獲得しました。オンセミによるAptina社の買収後、オートモーティブ・ソリューション・ディビジョンにエコシステム開発マネージャーとして異動しました。