簡素な構造のガラス管ヒューズでさえ、技術進歩の波には逆らえず、より高度な機能と洗練さを備えたインテリジェントな電子ヒューズ(eFuse)に移行しています。
多くの変化がありましたが、基本的な部分は変わっていません。ヒューズはすべて、数百アンペアであっても数ミリアンペアでも、過電流状態から回路を保護する保護デバイスです。保護とは通常、回路を電源から切り離すことを意味します。従来のヒューズでは、内部のヒューズワイヤーが溶断するため、ヒューズを物理的に交換する必要があります。一方、eFuseでは、半導体スイッチによって回路が切断されるためリセットが可能で、多くの場合は自動的にリセットされます。
オンセミの電流保護デバイスを参照:電流保護
従来のヒューズでは、負荷を切断する(つまり「溶断する」)ための特性はヒューズワイヤーそのもので決まりますが、eFuseでは多くの場合、専用ピンに外部抵抗を接続することで、この特性を調整できます。しかし、eFuseがどのように「溶断」するかを理解するには、デバイスを流れる電流だけでなく、より多くのことを考慮する必要があります。
eFuseは熱特性が大きく異なる可能性があるため、まずその熱特性を理解することです。大電流が流れるため、熱ストレスは多くのシステムにとって一般的な故障モードであり、デバイスの微細化が進むにつれて、その傾向はますます顕著になっています。
どのデバイス(eFuseを含む)の熱特性も、物理的なサイズと構造に関係しています。多くの設計では、半導体接合部と外気との間に多くの層が存在し、熱エネルギーはこの「熱ラダー」を通過して、放散されなければなりません。
熱の移動には時間がかかるため、短いパルスに伴う熱エネルギーは、すべてデバイス内部に留まります。多くのeFuseでは(熱容量によって異なる)、10msより長いパルスからの熱エネルギーの一部がパッケージに到達し、大気中やデバイスが実装されているPCBに放散し始めます。
定常状態での電流を分析すると、熱インピーダンス(ºC/W)、周囲温度、最大接合部温度に基づいてeFuseのRDS(ON)を決定できます。これにより、設計者は特定のデバイスの動作限界を計算できるようになります。
次に、さまざまな持続時間の大電流パルスを印加して、動的性能を評価します。これにより、パルス持続時間に対する熱インピーダンスを推定(およびプロット)することができます。
一般的に、熱インピーダンスはパルス幅が短いほど低くなり、RDS(ON)やダイサイズなどのパラメーターによって、これらの短いパルスに対するインピーダンス曲線の形状が決まります。パルス幅が長い場合(熱エネルギーがデバイス全体に伝播する時間がある)、PCBの影響が大きくなります。多層基板、厚銅配線などの属性やサーマルパッドなどの特性によって、曲線の形状が変化します。
特性評価方法は一貫していますが、変動要因(PCBなど)を考慮してアプリケーションごとに実施する必要があります。これを実施し、電流パルスの振幅と持続時間を明確に理解して初めて、特定のアプリケーションに最適なeFuseを選定することができます。
この特性評価は有用ですが、実際の使用においては、インピーダンス対時間の曲線を反転させて電流対時間の曲線に変換する必要があります。これを行うには、RDS(ON)と∆t(ダイ温度の許容変化量)を知らなければなりません。
これらの曲線から、所定の接合部温度 (Tj)上昇に対するパルスの最大持続時間を迅速かつ容易に求めることができます。もちろん、適切な設計手法に従い、ある程度の安全マージンを設けるべきであり、これはアプリケーションごとにケースバイケースで決定されます。
最後に考慮すべきことは、eFuseを通過する電流が流れるワイヤーを調べることです。使用するパラメーターは「電流の2乗×時間」、すなわちI2tです。従来のヒューズでは通常、公称ヒューズ電流とともに一定値として定義されます。
しかし、この直線アプローチでは、電流が少ない場合はワイヤーハーネスが長時間耐えられるという特性が考慮されないため、性能が不当に制限されます。このような理由から、eFuseのトリップポイントは通常、曲線に従うため、システム能力をより有効に利用できます。
この曲線アプローチを採用することで、システム要素を必要な性能に合わせて適切に調整でき、スペース、重量、コストを削減することができます。
将来のeFuse
オンセミは現在、I2CやSPIなどのシリアル通信プロトコルを使用して、曲線上のポイントとパラメーターをプログラム(必要に応じて再プログラム)できる、非定数I2tで動作可能なeFuseの開発に取り組んでいます。これらのヒューズには、新しい設計の出発点としてユーザーが選択可能な、いくつかの典型的な曲線が提供される予定です。