December 06, 2024

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12月5日木曜日11:34 CET(10:34 GMT、現地時間16:04)、Proba-3がPSLV-XLロケットでインドのシュリーハリコータにあるサティシュ・ダワン宇宙センターから打ち上げられた。

CREDIT: ISRO

今週、欧州宇宙機関(ESA)の最新の宇宙ミッションProba-3が、インドのシュリーハリコータにあるサティシュ・ダワン宇宙センターからロケットで打ち上げられました。このミッションで中核をなすのが、オンセミの4個の小型最先端シリコンフォトマルチプライヤ(SiPM)であり、宇宙探査にとって画期的な進歩となる宇宙空間での初の人工日食を起こす予定です。この歴史的なミッションは、普段は太陽の強烈な光で見えない、外側の淡い大気である太陽のコロナを理解する上で、これまでにない手掛かりを提供します。


宇宙空間での高精度の編隊飛行

Proba-3ミッションでは、コロナグラフ衛星とオカルター衛星の2基の衛星が150メートルの間隔で完璧な編隊を組んで、一回あたり6時間飛行することを目指しています。この配置は時速22,000マイルで飛行しながらミリ単位の精度で維持され、ほぼ完璧な日食を作り出すので、科学者たちはこれまでよりも太陽の周縁部に近い部分で太陽のコロナを研究できます。この偉業の鍵は、オンセミのSiPMで可能になった正確なアライメント技術にあります。これらのセンサがなければ、同じセットアップを実現するのに、2基の衛星を150メートルの長さで物理的に接続する必要がありますが、これは宇宙飛行とペイロードの制約からして実現不可能です。

図 1

約150mの距離にあるオカルター衛星とコロナグラフ衛星のグラフィック情報。指の爪の平均的な厚さである1ミリメートルのアライメントを示す

Credit: ESA – F. Zonno

オンセミでProba-3ミッションのリードエンジニアを務めるスティーブ・バックリー博士は次のように述べています。「ESAがオンセミのシリコンフォトマルチプライヤ技術を信頼したことは、比類のない性能と信頼性の証です。」また、「Proba-3衛星センサは1ミリメートル単位の安定性と精度を提供しており、皆既日食の形成に必要な高精度の編隊飛行を可能にします。Proba-3ミッションが始動し、この技術によって宇宙での野心的な試みが可能になったことを目の当たりにして、喜びでいっぱいです。」とも述べています。

図 2

プロトタイプのシャドウ位置センサ上で電子回路に囲まれた4個のオンセミのSiPM(紫色の円)x 2セット

CREDIT: Dr. Steve Buckley


図 3

ベルギーにあるRedwire社の拠点に設置されたコロナグラフ。中央の上の方に見えるのがシャドウ位置センサ(4個のSiPMが露出した円状部品)
CREDIT: ESA - P. Sebirot

シャドウ位置センサ(SPS)として知られる4個のオンセミのSiPMは、コロナグラフ衛星のカメラに収納されており、オカルター衛星上のオカルターディスクが作る影を追跡することによって、両方の衛星の位置を測定します。このセットアップにより、ほぼ完全な日食が起こり、類を見ないほど明瞭に太陽のコロナを観測することができます。これは地球上では回折公害のために不可能です。


なぜ太陽のコロナを研究するのか?

太陽のコロナの研究は、宇宙の天気、さらには地球の技術基盤に大きな影響を与える太陽現象を理解する上での手掛かりとなり、極めて重要です。Proba-3ミッションは、コロナの超詳細画像を提供します。コロナは太陽の淡い外層大気であり、通常は太陽の強い光に遮られてよく見えません。Proba-3のようなミッションは、太陽の明るい表面を遮ることで、めったに見られないコロナの様子を長時間見られるため、科学者はコロナの質量放出や太陽風などの太陽現象を観察することができます。これらの現象は、人工衛星の運用、通信ネットワーク、地球上の電力網に影響を与える可能性があり、その動きや起源を理解することが不可欠です。


宇宙探査の新時代

Proba-3ミッションは単なる科学的な実践ではなく、エンジニアリングの驚異であり、宇宙探査の新時代における可能性を反映するものです。オンセミはこのミッションを可能にする技術を提供することで、太陽の秘密を解き明かし、宇宙に対する私たちの理解を転換する可能性のある将来のミッションへの道を開くのに協力しています。

ESAのProba-3のプロジェクトマネージャであるダミアン・ガラノ氏は、次のように述べています。「Proba-3ミッションは、宇宙探査における重要なマイルストーンです。オンセミのセンサの精度と信頼性は、このミッションの成功に不可欠であり、画期的なデータが収集されることを楽しみにしています。」

図 4

編隊飛行するオカルター衛星とコロノグラフ衛星の想像図

Credit: ESA – P. Carril


イノベーションとコラボレーションの旅

オンセミのシステムデザインエンジニアであるバックリー博士は、トリノにあるイタリア国立宇宙物理学研究機構(INAF)やその他のパートナーと緊密に協力しながら、このミッションを成功させるためにプロジェクトをリードしてきました。

バックリー博士は、過去7年間にわたり、オンセミのセンサを宇宙に送り出す準備に重要な役割を果たしてきました。彼は、SPSエレクトロニクスの設計、SiPMセンサの実装、フィルタのフィルムの追加、センサの環境試験および放射線試験を担当しました。この広範囲に及ぶプロセスには、専門事業者との協力や、ベルギーのルーヴァン大学やリエージュ大学など各種施設での厳格な試験がありました。

図 5

INAFで同僚とフライトモデルの試験中のスティーブ・バックリー博士
Credit: Dr. Steve Buckley

バックリー博士はプロジェクト全体を通じて多くの困難に直面しました。彼はそのことを次のように語っています。「最大の課題は、温度変化、大気の影響、ノイズ、その他すべての事実を考慮した上で、安定した位置関係を保つのに必要な精度を実現するコンポーネントを見つけることでした。」

さらに、オンセミのセンサは、宇宙で高レベルの放射線に晒されても性能が劣化しないことを示すために、広範な放射線評価を受ける必要がありました。


将来への展望

Proba-3ミッションの打ち上げ準備中、発射場は興奮と期待に包まれていました。コロナグラフ衛星の冗長推進システムの技術的な問題により1日の遅れがあっても、緊張感と熱意は高まるだけでしたが、未知の課題があることも明らかです。

図 6

12月5日木曜日、Proba-3の打ち上げ成功直後、インドのシュリーハリコータにあるサティシュ・ダワン宇宙センターの屋上展望台で、スティーブ・バックリー博士とイタリア国立天体物理学研究所(INAF)の同僚たち
Credit: Dr. Steve Buckley

このミッションは、単に太陽を研究するだけでなく、宇宙探査における新たな地平を切り開くものです。そして、オンセミのSiPMは、まったく新しい可能性の世界を生み出す一翼を担っており、科学者たちは、これまで想像もしなかったような方法で太陽を見ることができるようになり、私たちの宇宙に関する理解を変えるかもしれない、未来発見の扉を開きます。

オンセミのバックリー博士ほど、今回の打ち上げ成功を喜んでいる人はいないでしょう。「私の手元にあったものなので、いまだに信じられません。」

このミッションでは、約4カ月後に最初の成果が期待されています。

オンセミのSiPMの詳細はこちらをご覧ください。