July 18, 2024

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産業用モータ制御システムの最適な設計は、電力効率に直接影響を及ぼし、それによって世界の電力消費に大きな影響を与えます。実際、 国際エネルギー機関(IEA)は、 電気モータで駆動するシステムが世界の電力消費の40%以上を占めると推定しています。

IEAはまた、電気モータ駆動システムの効率を10~15%改善すれば、世界の総電力使用量を5%削減できると推定しています。これは、業界にとってエネルギー消費に実質的な変化をもたらす、重要な機会であることを示しています。


産業用モータの重要性

効率と再現性を達成するために産業プロセスの自動化が進むにつれ、ほぼすべての分野で数ワットから数十キロワットの定格出力を持つ電気モータが見られるようになりました。

産業部門では、最も大型で強力なモータが使用される傾向にあり、これらが最も多くの電力を消費します。主な応用分野はファン、ポンプ、産業用ドライブであり、これらがおそらく最も一般的なものですが、他にも多くの使用事例があります。

ロボット工学は、ロボットの「アーム」を動かすだけでなく、無人搬送車(AGV)や配送ロボットなどの移動ロボットの車輪を駆動するために、完全にモータに依存している分野です。マテリアルハンドリングでは、屋内外を問わず、クレーンやコンベアのベルトの駆動に電気モータが使用されています。

電動ウィンチは、産業用アプリケーションで使用されますが、船舶、農業、自動車などの分野でも使用されています。電気モータは、エレベータや動く歩道の動力源として、また窓やドアの開閉など、ビルオートメーションにもさまざまなかたちで導入されています。

ここで取り上げた事例はごくわずかにすぎず、私たちが汚染の低減に努力する中で、小型内燃機関を使用する多くのアプリケーションは、まもなく電気モータで駆動されるようになるでしょう。


効率的な設計でのパワーモジュールの役割

シングルスピードモータは電源(通常は主電源)に接続するだけですが、可変速モータを動作させるには何らかの形の電子速度制御が必要です。多くの場合、これはコンバータ、ブレーキ、三相インバータで構成されるシステムで、スイッチには シリコンMOSFETSiC MOSFETIGBT、さらにはGaN HEMTなどが使用されます。

効率的な動作をする典型的なモータ制御回路
図1:効率的な動作をする典型的なモータ制御回路


通常動作時は、インバータから電力を供給してモータを加速し、減速時(特に慣性負荷が大きい場合)にはブレーキ部と外付け抵抗で回生エネルギーを消費します。

モータ制御回路を設計する場合、設計者には、効率、信頼性、堅牢性、小型化、熱性能など、達成すべき目標がいくつかあります。ほとんどの場合、許容できる解決策に到達するにはトレードオフが必要です。

設計では全体をディスクリート部品で構築することもできますが、モータコントローラ回路付きの構成済みモジュラー設計を使用すると、多くの利点があります。


デバイスタイプ別の定格電力
図2:デバイスタイプ別の定格電力


インテリジェント・パワーモジュール(IPM)は、PFCコンポーネントをコンパクトなパッケージに統合したオールインワン・テクノロジーです。オンセミのIPMには、必要な受動部品、ゲートドライバ、パワースイッチ、パワーダイオードがすべて含まれています。これらは、異なるアプリケーションに対して異なるトポロジを実装できるように配置されています。


必要なすべてのコンポーネントを統合したパッケージソリューション
図3:必要なすべてのコンポーネントを統合したパッケージソリューション


IPMにはゲートドライバが含まれていますが、パワー統合モジュール(PIM)にはありません。高電力アプリケーションでは、ゲートドライバによってノイズが発生する可能性があり、これを回避するためにメインPCBに外付けされます。


一般的なデバイスタイプ別の統合
図4:一般的なデバイスタイプ別の統合


高周波モータアプリケーションの効率を向上させるために、設計者はシリコンカーバイド(SiC)技術に注目することが頻繫にあります。SiCは、電子移動度の高速化、固有キャリアの低濃度化、熱伝導性の向上を達成します。SiC MOSFETは、電流密度の向上、スイッチングの損失の低減、高温動作、高周波数動作能力を提供します。その結果、より効率的な動作、冷却の軽減、受動部品の小型化が実現し、よりコンパクトなソリューションにつながります。


オンセミのソリューション

アプリケーションによって性能とコストの目標が異なるため、 オンセミ はIGBTとSiC双方の技術に基づくIPMおよびPIMの幅広いポートフォリオを提供しています。高効率、小型サイズ、高周波数が必要な場合は、SiCが最適な技術です。制御の容易さやコストを最も重視する場合は、IGBTが理想的なソリューションを提供します。最新の1200 V Field Stop 7 (FS7) IGBTは堅牢性、高電力密度、低伝導損失を特長としています。例えば、FGY100T120RWD は、TO-247ディスクリートパッケージでVce(sat)1.4Vという市場で最も低いレベルの電圧で100Aを流すことができます。


オンセミの包括的なIPMおよびPIMの製品群
図5:オンセミの包括的なIPMおよびPIMの製品群


オンセミのIPMは数ワットから15kWまでのアプリケーションに適しており、PIMシリーズは数百ワットから50kW以上の設計に対応します。


IPMアプリケーション
図6:IPMアプリケーション


SiCは新しい技術であるため、個々のコンポーネントはシリコンの同等品よりもコスト高になる場合もありますが、システムレベルでのコスト削減(受動部品や冷却装置を含む)によって十分に相殺されます。さらにオンセミは、設計を完成させるためのSiC向け補助回路コンポーネントを幅広く取り揃えています。


まとめ

電気モータは、他のどのアプリケーションよりも多くのエネルギーを消費し、世界の総消費量の約40%を占めます。ここでの効率向上は、世界の電力使用量の削減に大きな影響を与えるでしょう。

SiCベースモジュールを使用した最新の設計は 、システム全体のコスト削減に加えて、高性能、堅牢性、小型サイズを実現します。

オンセミはこの技術分野におけるマーケットリーダーの一社であり、モジュールと関連コンポーネントを幅広く取り揃えています。産業用モータ制御の電力効率を向上させる方法については、ホワイトペーパーをご覧ください。また、新しい産業用モータドライブのシステムソリューションガイドもご活用ください。