May 23, 2024

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電気自動車(EV)に切り替えるとき、ドライバーにとって最も大きな変化はおそらく燃料補給でしょう。燃料補給はもはやガソリンスタンドに行くことではなく、利用可能な充電ポイントを探すことです。

公共充電器の導入が急速に進んでいますが、多くの人は自宅での充電を希望しています。バッテリを直接充電する DC 電力を供給する多くの高出力公共充電器とは異なり、家庭用充電器は AC 電源を供給します。このAC 電源は、バッテリを充電する前にオンボードチャージャ(OBC)を介して変換する必要があります。

代表的なEVドライブトレインの構造(出典:オンセミ)
図1:代表的なEVドライブトレインの構造(出典:オンセミ)


充電インフラを見ると、高出力 DC 充電器は最も高速ですが、最も高価なソリューションでもあり、高速道路や大型商業施設に適しています。

AC充電器は、軽商業ビル、中小企業、住宅での設置が一般的です。AC充電器は、EV内部のOBCに依存する費用対効果の高いソリューションを提供します。

EV技術の進化に伴ってOBCも進化する必要があります。特に自動車メーカーが400Vから800Vのバッテリアーキテクチャに移行する場合がそうです。消費者需要とバッテリ容量(kWh)の増加も原動力となっています。EVをより速く充電したいという要望のため、OBCの電力容量は初期設計の3.6kWから、送電網がサポートできる場合は7.2kWまたは11kWまで増加しています。


バッテリ電気自動車(BEV)用充電器タイプの分類
図2:バッテリ電気自動車(BEV)用充電器タイプの分類


OBCの主な設計上の考慮事項

OBCの詳細設計に着手する前に、設計者は主要な設計パラメータを把握しておく必要があります。設計パラメータがコンポーネントとトポロジの選択に影響を与えるからです。

ユーザー体験に影響するので、電力レベルの決定が重要な最初のステップです。単純なレベルでは、OBCの出力が高くなるほど、バッテリに電気を供給する時間が短くなります。多くの場合、ユーザーは自宅で他の作業をしている間(あるいは寝ている間!)に車を充電するので、この充電時間はそれほど問題にはなりません。しかし、旅の途中で再充電する場合、充電時間は非常に重要な要素です。 レベル2充電器に接続する場合、OBCの定格出力は通常7.2kWまたは11kW程度です。より強力なOBCの定格出力は22kW、場合によってはそれ以上です。

OBCの電力レベルは、送電網の容量と、最大電流などサーキットブレーカによる制限に合わせて設計されます。230Vの送電網を一例として考えてみましょう。 7.2kWのOBCは、単相設計では最大32Aを消費します。11kWまたは22kWのOBCは、三相AC入力に最適化されており、AC充電器の各相から最大16Aまたは32Aを消費します。これらのアンペア数は一般的に、230Vの家庭や軽商業ビルで充電の費用対効果を維持するために設置するAC充電器の限界です。もちろん、公共スペースや大規模な商業施設には、さらに高い電力を利用できる ACポートがあり、22kW を超える電力レベルを利用できます。

世界中でEV が販売されていますが、グリッド電圧が北米ではAC110Vであるのに対し、ヨーロッパや中国では AC230V が最も一般的であるなど、各地域で異なるという課題があります。電力業界では車両がどこに出荷されるかに関係なく、単一OBCの使用が可能になる86~264V AC の「ユニバーサル入力」で設計するのが一般的です。

同じ充電ポートを使用して、直流電力を供給する路上急速充電器からEVを充電でき、OBC内部でのAC-DC変換が不要になるので、通常は直流電力を高電圧バッテリに直接流すためのバイパス機能を提供する必要があります。

効率はOBCにとって最も重要なパラメータの一つです。効率が高いということは、一定時間により多くの電気がバッテリに供給されるということです。これにより、特に送電網の各相限界で動作する場合は充電時間が短縮されます。

OBCの効率が100%から遠ざかるほど、ユニット内でより多くの熱が発生します。これは無駄が多いだけでなく、追加冷却も必要なため、スペースの制約上、最新のEVでは困難な場合があります。OBCのサイズと重量が増え、車両が重くなると、バッテリは走行時により多くのエネルギーを消費し、最終的に車両の航続距離が短くなります。

効率向上はすべての電源設計者のテーマであり、 これは複雑かつ多面的な課題です。変換トポロジと制御方式も大きな影響を与えますが、最高の効率を達成するには、コンポーネント(特にMOSFET)の選択が極めて重要です。


OBC設計のパワーステージ

一般的にOBCは、EMIフィルタ、力率補正(PFC)ステージ、一次側と二次側を分離した絶縁型DC-DCコンバータの3つの主要ブロックで構成されます。これらのステージは、さまざまな電力トポロジを使用して構築でき、それぞれが効率、コスト、性能の面で異なる利点を提供します。

代表的なOBC内の主要ステージを示すブロック図(出典:オンセミ)
図3:代表的なOBC内の主要ステージを示すブロック図(出典:オンセミ)


PFCステージはOBCのフロントエンドであり、多くの重要な機能を実行します。まず、入力 AC グリッド電圧を「バス電圧」と呼ぶ DC 電圧に整流します。この電圧もPFCステージによって調整され、グリッドからの入力AC電圧によって異なりますが、多くの場合は400V前後になります。

PFCステージのもう一つの重要な機能は力率の改善です。力率が低いと、「ファンタム電源」という作用によって電気料金が高くなる可能性があるからです。そのため、PFCステージは電圧と電流の波形を同位相に維持しながら、電流波形をできるだけ純粋な正弦波に近づけて全高調波歪み(THD)を低減します。優れたPFCステージは、1に近い力率を返します。

DC-DCコンバータには2つの役割があり、グリッドからの電圧を絶縁し、PFCステージからのバス電圧を400Vまたは 800VタイプのEVバッテリの充電に適した電圧レベルに変換します。

DC-DCの一次ステージはDCバス電圧を「切断」するため、DCバス電圧は一次ステージと二次ステージ間のトランスを通過でき、二次ステージは出力電圧を整流してバッテリの充電に適したレベルに調整します。

設計者は、OBC を単方向にするか双方向にするかを検討する必要があります。これは、利用可能な電力ステージのトポロジと OBC の全体的なコストに影響するためです。双方向機能の追加は OBC の設計トレンドの一つであり、これにより車を大型のモバイル バッテリ ストレージにすることもできます。


結論

効率の高いOBCを設計することは簡単な作業ではありません、特にサイズと性能はEVの動作と全体的なユーザー体験にとって極めて重要です。さまざまな入力電圧に対応し、キロワットの電力を可能な限り効率良く、軽量かつコンパクトな設置面積で変換できる設計でなければなりません。

考慮すべきトポロジと制御スキーム には複数の選択肢があり、選択するコンポーネントは多岐にわたります。これらすべてが最終設計のパフォーマンスを決定します。

多くの設計者は、タスクを簡素化するためにできるだけ少ないソース、理想的には1つのソースからのコンポーネントを使用することを選択します。

オンセミは、完全なOBCパワートレインの設計に使用できる幅広いディスクリートコンポーネントとパワーモジュールを提供しています。OBCシステムソリューションガイドでは、さまざまな電源トポロジと利用可能なコンポーネントをご紹介しています。システムソリューションガイドをダウンロード頂き、OBCソリューションページで詳細をご確認ください。


その他の資料:

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オンボードチャージャ

Best in class automotive power semiconductors, including EliteSiC MOSFETs, EliteSiC diodes, silicon Super-Junction (SJ) MOSFETs, hybrid IGBTs, and Automotive Power Modules (APMs), enable customers to maximize power density, efficiency, and reliability for their On-Board Charger (OBC) designs. Customers can design OBC power stages that address 3.3 kW up to 22 kW and battery voltages up to 800 V using onsemi solutions.

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Plugin Hybrid Electric Vehicles (PHEV), Battery Electric Vehicles (BEV), and Fuel Cell Electric Vehicles (FCEV) use OBC modules to charge the high voltage battery pack. The term ‘New Energy Vehicle (NEV)’ encompasses all three aforementioned types (PHEV, BEV, FCEV). The high-level function of the OBC is to convert an AC voltage input to a DC voltage output with the appropriate output current and voltage level for the battery pack to charge. While many OBC implementations are unidirectional (grid-to-vehicle charging), there is a movement to provide bidirectional capability allowing grid-to-vehicle and vehicle-to-grid charging with BEVs.

These “On Board” Charger modules, located on the vehicle as the name suggests, have air or liquid cooling to help with thermal management due to the power levels. Depending on the architecture, the OBC output may need to operate down to less than 250 VDC and operate at 800 VDC or higher when charging the main vehicle battery pack.

Whether it is Power Factor Correction (PFC), primary side DC-DC, or secondary rectification, onsemi provides the best solution to address your system requirements. Our premier automotive product portfolio for OBC covers EliteSiC MOSFETs, EliteSiC diodes, APMs, MOSFETs, IGBTs, gate drivers, In-Vehicle Networking (LIN, CAN, CAN-FD), analog signal chain (OpAmps, current shunt amplifiers, comparators), power supply ICs, System Basis Chips (SBCs) and silicon diodes.